社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
そうつぶやく声以外、音がなかった。時計の音も聞こえない静かな部屋の中で、彼は言葉を続ける。
「だから俺は、コンプレックスに悩んでるヤツがいたら助けになりたいと思ってた。もっと広い世界があることを教えてやりたいってな。昔の自分を救ってやってるつもりだったんだ」
社長は言葉を切った。透き通った瞳で私を見つめてから、わずかに眉を下げる。
「お前のこともそうだ。この子はコンプレックスを抱えてるから変えてやろうって思ってた。……でも」
形のいい唇の端っこが小さく持ち上がる。突然表れた優しい微笑に、心臓が激しく飛び跳ねた。
「お前は、コンプレックスを抱えてるわりに自分を卑下してない。前向きで、がむしゃらに生きてて……エネルギーに満ちてる」
体が震えるくらいに、鼓動が響く。