社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
閉じたドアに触れると手のひらにひんやりと心地いい。ひと時、肩の力が抜けた。前後左右を人に囲まれるよりも、ドアにくっついていた方がだいぶましだ。このまま到着駅までこの場所をキープしよう。
そう思って身動きが取れないながらもポジションを調節しようとした瞬間、違和感を覚えた。さっきから誰かのカバンがお尻に当たっているなとは思っていたのだ。それがふいに動いた。
もぞもぞした動きに、最初は誰かが私のように体勢を変えようともがいているのかなと思った。でも、それにしては不自然な動きだ。なで回されるような感覚に、まさかと思ってぞっとする。
声を出すことも、振り返ることもできなかった。
なにこれ……怖い。
身動きが取れないまま、ただ体を固くして、恐怖に耐えた。