社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

「電車通勤て、こういう試練もあるんですね……」

「試練じゃないよ! 犯罪だから! 耐えるもんじゃないからね!」

「前原ちゃん、忍耐強いもんなぁ。通勤時間二時間半なんて、俺一週間でも無理だよ」

 電車で三十分圏内のところに住んでいるという名取さんは気の毒そうに言って、私を見た。

「ていうか、今まで気づかなかったけど、前原ちゃんて意外と……」

 顎に指をあててなにやら唸っている彼に、板倉さんが噛みつく。

「おい名取。視線がセクハラ!」

「は? ちげーよ! ただ痴漢に狙われやすそうなタイプだって思っただけで」

「狙われやすそう?」

 私の視線を受けて、営業マンはこほんと咳ばらいをしてから真面目な表情になる。

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