社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

「通勤時間を考えると電車を変えるのは難しいから、車両を変えてみます」

「いやあ、どうかなあ」

 私の足元から頭までを改めて見回し、名取さんはつぶやく。

「前原ちゃんは背があるぶん特に目立つから、車両変えたくらいじゃ見つけられちゃうかも」

「名取! なんで怖がらせるようなことばっかり言うんだよ」

「気を付けた方がいいからだろ! いろんな可能性を考えたうえで善後策を……」

「なんの話だ」

 突然背後から低い声が聞こえて、三人で振り返った。襟にラインの入ったおしゃれな黒いポロシャツに細身のパンツを合わせた社長が、いつもの眠そうな顔で立っている。

「あ、社長おはようございます! いやー前原ちゃんが今朝痴漢に遭ったらしくて」

「ななな名取さん!」

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