社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
お祭り気分みたいなものだ。自分だとわからないくらい思い切った変貌を遂げられるなら、一度くらい動画配信に登場するのも悪くない。
控室とは名ばかりの倉庫の片隅でワンピースに着替えながら、人知れず苦笑した。
私にとって、きちんとしたメイクやおしゃれな服装は、コスプレと同じなのだ。
日常ではない、非日常の自分。女としてはどうかと思うけれど、夢くらい見たっていいよね。
自分には縁がないと思っていた輝く世界。社長やイソラやきれいなモデルの女性たちにしか拓かれていないそのドアの向こうに、一瞬でも足を踏み入れることができるのなら。
社長の言っていた『もっと広い世界』を、私でも体感することができるなら。
真剣な表情でフロアを見守っていた端正な顔を思い出す。
社長に、少しでも近づけるなら――。
「はい、OK。目を開けていいですよ」