社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
バッグを抱きしめながら、極力存在感を消そうと背中を丸めた。
だって前の職場では制服があったし、本社に行くときだけ店長が出張っていたから、私がスーツを着る機会なんてほとんどなかった。
体が壊れるまで働いて受け取った給料も、生活費と奨学金の返済と妹の学費に消えてほとんど残っていない。
貯金もなく、転職活動のための交通費すら支払えるか危うい状態だった私が、新しいスーツを手に入れるなんてどう考えても無理な話だ。
よくよく考えれば、私服もろくなものがない。
うわ、どうしよう。正社員の職を探さなきゃと焦ってばかりで通勤服のことまで気が回らなかった。
店舗勤務のときは母の車を借りて出勤していたから自宅から制服を着ていくことが多かったし、地元で買い物に行くときは基本的にジャージだった。