社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

「遅い! どこほっつき歩いてるんだ!」

「す、すみません! 打ち合わせがだいぶ長引いて。今駅なので、あと十五分くらいで帰社します」

 電話の向こうで鬼の形相をしている社長を思い浮かべながら、いつものくせで頭を下げると、幾分落ち着いた声が聞こえた。

「……雨がひどいから、気をつけて戻ってこい」

「はい」

 もう一度頭を下げて通話を切りながら、ふうと息をつく。

 なんだか、最近の社長は過保護な気がしてならない。

 社長自身に同行するときはそうでもないのに、それ以外の人、特に営業の名取さんと外出するときは必ず電話がかかってくる。

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