社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
設立四年目、従業員二十名で年商十億を超えるベンチャー企業の社長というのは、みんな新井さんのようにカリスマ性を備えているのだろうか。
「それと、今日から一緒に働いてもらう社員を紹介する。前原結愛さん」
社長と目が合って、私は急いで立ち上がった。彼に向けられていた視線が一斉に集まって、手に汗がにじむ。
「ま、前原結愛(ゆめ)と申します。前職ではハンバーガーを作っていて、この業界のことは右も左もわかりませんが、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いいたします」
拍手に交じって「やっぱり大きい」というつぶやきがいくつか聞こえた。慣れているはずなのに、ますます体が縮こまる。
私が席につくと、新井社長はすぐに話を切り上げ、フロアの奥に消えていった。