社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

『まさか、優志くんと……』

 目を見開く彼女に、慌てて両手を振る。

『な、ないです! 社長とはまだ……』

 昔の彼女に知られるのはまずいかもしれないと思いつつ、恋愛初心者の私はごまかすのが下手で、考えもすぐ顔に出るらしい。

『まだないけど、何かはあるのね』

 くすりと笑う彼女は、すべてを見透かしているようだった。

『やっぱり日本食が一番だわ』とつぶやきなら私に目を戻すと、新庄さんはいたずらっぽく微笑む。

『優志くんから手を出された? まあでも、あなたみたいな魅力的な子が一緒の部屋にいたら、そりゃ男はたまらないわよ』

『魅力的……?』

 不可解な言葉にきょとんとしていると、新庄さんがすっと人差し指を伸ばした。美しいネイルが施された指で、ぽふっと私の胸を突く。

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