社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 思いがけない展開に面食らう。話が見えないまま固まっていると、社長はさらに予想外のことを言った。

「距離が近くて我慢できなかった。でも、それじゃ済まされないよな。だから――」

 私の手を握り直した彼の目に、真剣な色がともる。

「俺と付き合ってほしい」

「……はい?」

 聞き間違いかと思ってぽかんとしていると、社長は目をすがめた。

「……いやなのか?」

「え、いやっていうか……え?」

「それじゃ結局パワハラじゃない」

 後ろからの声に、社長がはっとして振り返る。バルコニーにいた新庄さんが窓ガラスを薄く開けて、その隙間から顔を出していた。

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