社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
問答無用だった。
社長は立ち上がって彼女の荷物を持つと、新庄さんの背中をぐいぐい押して廊下の方へ追いやっていく。
「ちょ、ちょっと優志くん!」
急な展開に、私は抗議の声を上げる新庄さんをぽかんと見送ることしかできなかった。「なんなのよー!」という叫び声のあと、玄関のドアが閉まり鍵を掛ける音が聞こえる。
リビングに戻ってきた社長は、呆気に取られている私を見て気まずそうに視線を逸らした。
目を合わさないようにそっぽを向いたまま、大きな体は私の隣、さっきまで新庄さんが座っていた場所に腰を下ろす。
「……あの、いいんですか? 彼女を放り出して。誤解されるんじゃ」
「誤解? 何がだ」
不思議そうに振り向いた端正な顔から、今度は私が目を逸らす。
「だって、社長は新庄さんとヨリを戻すんですよね」