社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 しばらくの間、沈黙が漂った。

 息が詰まるような空気におそるおそる顔を上げる。目に入ったのは、ぽかんと口を開けている社長の顔だ。

「……あの?」

 どうして何も言わないのだろう。

 沈黙に耐え切れずに口を開きかけた瞬間、大きな手に耳を掴まれた。

「い、痛」

 眉間にしわを寄せ端正な顔を歪ませながら、社長が身を乗り出してくる。

「なんでそうなる?」

「だ、だって! 社長は新庄さんのことが好きなんですよね」

「誰がいつそんなことを言った」

 耳を引っ張った手が、私の肩に移動する。のしかかってくる大きな体に成すすべもなくソファに押し倒される。

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