社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
今度は優しいキスだった。
柔らかい感触に、私の目じりから涙が溢れていく。泣きたいわけじゃないのに止まらなかった。
「なんで泣いてるんだよ。普通わかるだろ、あんだけ態度に出してたんだから」
「……そんなこといわれたって、言ってくれなきゃわかんないですよ」
私は恋愛なんて見向きもしないまま必死に生きてきたのだ。態度で察しろといわれても、難しすぎる。
それに、社長みたいな人が私のどこを好きになってくれるというのか。
「泣くなよ。悪かったって」
ささやきながら彼は頬に伝う私の涙に口をつけ、そのまま目もとにキスをした。優しく触れられるたびに、胸がきゅっと音を立てる。
「てっきり、社長は、私の体目当てなのかと」
とぎれとぎれに言うと、ぴたりと彼の動きが止まった。目を上げた瞬間、固まった顔が視界に入る。視線を追うと、私の胸に伸ばしかけている大きな手が目に入った。