社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 でも……と、自分と同じような格好の求職者たちを見回して考える。

 企業担当者もいるこの場所にスーツで来ないのは、さすがにちょっといただけない。

 いくら服装自由のイベントだからって、転職活動という名の戦いはこの会場に足を踏み入れた瞬間からすでに始まっている。

 今日という日のために、私は大学生の時に買ったリクルートスーツに身を包み、肩に届くくらいのボブヘアを強引に後ろでひとつにまとめて、企業担当者の心証を少しでも良くしようと万全の準備をしてきた。

 ぼやける視界を補正してくれるメガネは、当然ながらおしゃれからは程遠い近視用の黒ぶちメガネだ。

 手にしたクリアファイルには、昨晩時間をかけて丁寧に書きこんできた履歴書が挟まっている。

< 5 / 383 >

この作品をシェア

pagetop