社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~
きゅっと胸が高鳴る。飲み会の最中はほとんど話せなかったけれど、どうやら社長は歓迎会の主役にあたる私が変な飲まされ方をしなかったか、気にしてくれたらしい。
長身の彼に向かってゆっくり首を振った。
「すごく楽しかったです。これから二次会なんですね」
「なんだかんだでいっつも全員参加するんだよ。前原も行くだろ?」
「あ……すみません。私、バスがなくなっちゃうんで帰ります」
答えた途端、社長の目が丸まった。シンプルだけど質の高そうな腕時計に目を落とし、私に視線を戻す。
「まだ二十二時前だぞ」
「電車は遅くまであるんですけど、駅からバスなんです。地元まで二時間かかるので……」
「二時間!? どこから通ってきてるんだっけか?」
「隣の県なんですけど、家が駅からちょっと遠くて……」