社内溺甘コンプレックス ~俺様社長に拾われました~

 思わず社長を振り返った。彼は切れ長の目をきょとんとまたたいて小柄な板倉さんを見下ろしている。

「お、お似合いなんて、そんなまさか」

「ホントだ! 身長だけはめちゃくちゃバランスいいな~。社長でかいから、なかなか釣り合う女がいませんもんねー」

 へらへら笑いながら話に入ってきたのは営業マンの名取さんだ。こちらも耳まで赤く染めて楽しそうに私たちを見ている。

 急激に羞恥心がこみ上げて、顔を伏せた。

 バランスがいいと言われたのは、身長だけ。

 そりゃそうだよ。

 もはや黒縁メガネと一体化しているベストオブ地味女の私と、誰が見てもモデルにしか見えないイケメン社長が、お似合いのはずがないのだから。

< 96 / 383 >

この作品をシェア

pagetop