君が夢から覚めるまで
1.家庭教師
Did you sleep well ?
指先が震える。
『初めて』の時はいつもこうだ。
『篠原』と書かれた表札の前で、大学2年生の吉井香帆(よしいかほ)は何度も深呼吸をしてインターホンを押そうとする。
アルバイトでこの家の家庭教師をやる事に決まったのは1週間前。
家庭教師の派遣先から生徒の資料を貰った。
「篠原(しのはら)…怜(れい)…ちゃん?可愛い名前〜今年受験の女子高生ね!どんな子かな〜きっとスラッとした清楚な美人かな〜。私、絶対仲良くなれそう‼︎」
そう意気込んで来たものの、いざ本番となると足が竦む。
「あ〜私って、どうしてこうもチキンなんだろ…」
項垂れて大きく溜息を吐く。
息を吐ききったところでもう一度大きく息を吸う。
「えいっ!」
上品なインターホンの音がする。
『はい』
「あ、わ、私、『家庭教師のジャンプ』から派遣されました、よ、吉井と申しますっ」
ドッキン、ドッキンと心臓の音まで聞こえてしまうのではないかと思うぐらい緊張していた。
「お待ちしてました」
玄関が開き、中年の女性が出迎えてくれた。
「はじめまして、吉井香帆と申します。今回、篠原怜さんの家庭教師として派遣されて参りました。宜しくお願いします」
香帆は深々と頭を下げた。
「まあ、可愛らしい先生。怜の母です。そんな堅苦しい挨拶は不要ですよ、よく来て下さいました。さあ、お上がり下さい。怜〜!怜ー!先生いらしたわよ〜」
母親が階段の上へ呼びかける。
すると、階段から降りてくる音が聞こえた。
やがて足先から順番にその姿が見えてくる。
スラッとした清楚な美人女子高生…。
「…え…?」
香帆の目の前に現れたのは、ジーンズにTシャツ姿の少年だった。
「息子の怜です。ほら、あなたもご挨拶」
「篠原怜です。宜しく先生!」
怜と紹介され、怜と名乗ったのはどう見ても男子高生だった。
「え…男…の子…?え?ええっ⁉︎」
香帆は慌てて鞄から生徒の資料を取り出す。
名前ばかりに気を取られて、肝心な所を見てなかった。
性別…男…。
指先が震える。
『初めて』の時はいつもこうだ。
『篠原』と書かれた表札の前で、大学2年生の吉井香帆(よしいかほ)は何度も深呼吸をしてインターホンを押そうとする。
アルバイトでこの家の家庭教師をやる事に決まったのは1週間前。
家庭教師の派遣先から生徒の資料を貰った。
「篠原(しのはら)…怜(れい)…ちゃん?可愛い名前〜今年受験の女子高生ね!どんな子かな〜きっとスラッとした清楚な美人かな〜。私、絶対仲良くなれそう‼︎」
そう意気込んで来たものの、いざ本番となると足が竦む。
「あ〜私って、どうしてこうもチキンなんだろ…」
項垂れて大きく溜息を吐く。
息を吐ききったところでもう一度大きく息を吸う。
「えいっ!」
上品なインターホンの音がする。
『はい』
「あ、わ、私、『家庭教師のジャンプ』から派遣されました、よ、吉井と申しますっ」
ドッキン、ドッキンと心臓の音まで聞こえてしまうのではないかと思うぐらい緊張していた。
「お待ちしてました」
玄関が開き、中年の女性が出迎えてくれた。
「はじめまして、吉井香帆と申します。今回、篠原怜さんの家庭教師として派遣されて参りました。宜しくお願いします」
香帆は深々と頭を下げた。
「まあ、可愛らしい先生。怜の母です。そんな堅苦しい挨拶は不要ですよ、よく来て下さいました。さあ、お上がり下さい。怜〜!怜ー!先生いらしたわよ〜」
母親が階段の上へ呼びかける。
すると、階段から降りてくる音が聞こえた。
やがて足先から順番にその姿が見えてくる。
スラッとした清楚な美人女子高生…。
「…え…?」
香帆の目の前に現れたのは、ジーンズにTシャツ姿の少年だった。
「息子の怜です。ほら、あなたもご挨拶」
「篠原怜です。宜しく先生!」
怜と紹介され、怜と名乗ったのはどう見ても男子高生だった。
「え…男…の子…?え?ええっ⁉︎」
香帆は慌てて鞄から生徒の資料を取り出す。
名前ばかりに気を取られて、肝心な所を見てなかった。
性別…男…。
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