君が夢から覚めるまで
「ぎゃはははは‼︎」
部屋に通され、怜はお腹を抱えて大笑いした。
「ごめんなさい、てっきり女の子だと思い込んでて…」
「あはは、おっかしー!まあ、怜なんて名前、男でも女でもいるもんな。けど、勝手に清楚な美人想像してたなんて笑える‼︎」
香帆の勘違いを涙を流しながら大笑いするその少年は、清楚な美人とは程遠く、人懐っこい明るいキャラクターだった。
「本当、ごめんなさい…」
「いいって、いいって。子供ん頃はちょっと髪長かったりするとすぐ女の子に間違われてたもん、俺。けど、気に入った!先生、宜しくね」
差し出された手を香帆は握り返した。
それは、紛れもなく暖かくて大きな男子高生の手だった。
2時間の授業が終わると、母親がお茶を用意してくれた。
「どうです?うちの怜。ほんっと、ヤンチャなんで先生もご苦労される事でしょうけど」
「いえ、そんな事ないですよ」
「先生、教え方上手いんだよ。すごい分かりやすかった」
「本当?良かった」
香帆は胸を撫で下ろした。
「本当、本当!学校の先生に向いてるよ」
「怜君、褒めすぎ。こうゆうのは相性もあるのよ。私が言いたい事を怜君がちゃんと理解してくれるのよ」
「じゃあ、俺たちの相性バッチリだね!」
「今度は大丈夫そうね?」
母親がフフッと笑う。
「今度?」
「あ、前来てたセンセとはウマが合わなくてさ…やっぱ女の子先生に頼んで良かったよ」
怜はニッコリ笑った。

帰りは駅まで怜に送って貰った。
はじめはどうなる事かと不安だったが、香帆の言うことにちゃんと理解しようとする努力も認められる。
上手くやれそう…そんな気がしていた。



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