君が夢から覚めるまで
17.肝試し
香帆は怜を見送った後、和馬から少し離れたところに立っていた。
二人っきりで肝試し…何を話したらいいのだろう…。
順番に呼ばれ、次は香帆達の番だ。
「7番の方〜」
幹事が和馬に懐中電灯を手渡し、ルールの説明をする。
二人一組で林道に入って行き、奥の祠にあるお札を取って帰ってくる…それ以外は仕掛けも何もない。
「じゃ、行こか」
「あ、はい…」
順番待ちの人に見送られる。
香帆は和馬の数歩後ろをついて歩いた。
一番最初に出発した怜はまだ戻って来てなかった。
「まさか…怜の自慢の彼女が香帆だとは思わなかったよ」
ははっと和馬は笑った。
香帆は何も答えなかった。
「東京にいるって話は聞いてたからさ」
「誰に?」
「ヤスとか」
ヤスは高校の同級生だ。
口止めはしてなかったが、和馬にその情報が行くとは思ってなかった。
「ほら、もうちょっとこっち来ないと…足元暗くて転ぶぞ」
「…平気…きゃっ!」
足に何かが引っかかった。
「言わんこっちゃない。ほら」
和馬が手を差し伸べる。
「大丈夫」
「何が大丈夫だよ。すっ転んでるクセして」
「平気‼︎」
和馬の手を払おうとした。
が、掴まれてしまった。
「そうゆう意地っ張りなとこ、変わってないんだな。本当は全然平気じゃないだろ?足震えてるぞ」
「余計なお世話です」
「はいはい、どうせ俺はお節介ですよ」
そう言って和馬は香帆の手を引き歩き出した。
掴まれてる手が熱い…。
「…なんで東京来た?」
「ん…なんとなく…」
触れて欲しくない話題だった。
「香帆なら、地元でも行ける大学いっくらでもあっただろ?」
「そう、かな」
「お前みたいな人見知りする奴が地元離れるなんて思ってなかったよ」
「地元にいたくなかったから…ただそれだけ」
「何で?」
何も分かってない和馬に腹が立つ。
「…涼葉ちゃん…可愛いね。ああゆう子が好きだったんだね」
話題を変えた。
けど、そんな事が言いたいんじゃなかった。
「あ…まあ、香帆とはタイプが違うな…」
「私と比べないでよ…」
「悪い…。お前こそ、怜みたいなのが好きだったのか?」
「別に…」
「なんだそりゃ?まあ、怜が半年以上かけて口説き落としたっていう武勇伝は何度も聞かされてたけどな。大学受かったら付き合えって脅されたんだって?」
「別に脅されたわけじゃないよ」
「けど、まあ結果的にそうなったんだろ?そうゆうはじまりアリかもしれないけど…怜の事、好きなのか?」
「え?」
思わず立ち止まる。
「怜はお前の事、好きで好きで堪らないってのはよく分かるけど、今日の香帆見てる限りでは怜の事好きとは思えなかった」
「勝手言わないでよ!何でそんな決めつけるの?そんなの順番にゆっくり行けばいいじゃないっ‼︎」
つい大きな声を出してしまった。
まるで核心をつかれたかのように…それを否定するが如く。
「分かった、分かったから。そんなムキになるなよ。俺が悪かった。ほら、のんびりしてると次のチームが来るぞ。サッサと行くぞ」
和馬がまた香帆の手を引き歩き出した。
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