君が夢から覚めるまで
ボンヤリとしながら部屋に戻ると怜は既に戻って来ていて、布団が並べて敷いてあった。
これからする事を生々しく感じた。
「チューハイもらって来たけど、香帆ちゃん飲む?」
「怜君は飲まないの?」
「うん、俺は未成年だし。ってか、まだお酒慣れしてないし、酔った勢いで記憶なくしてとか嫌だし」
怜は恥ずかしそうに笑った。
二人はチューハイと烏龍茶で乾杯した。
なんとなく気が進まないでいた。
「香帆ちゃんって、スッピンでも可愛いね」
怜が香帆の顔を覗き込んできた。
そう言われて初めて怜に素顔を晒したことに気付き恥ずかしくなり思わず顔を両手で隠した。
「なんで隠すの〜ちゃんと見せて」
怜が無理やり香帆の手を顔から離す。
香帆は恥ずかしさのあまり目をギュッと瞑った。
「可愛い〜」
チュッとキスをしてきた。
と、同時に押し倒される。
「れ、怜君⁉︎」
怜を見上げると段々顔が近付いてくる。
「好きだよ…香帆ちゃん…」
唇が重なる。
僅かに怜が震えているのが分かる。
怜にとってこの日はどんなに特別なのか…伝わってくるようだった。
キスが深くなる。
ーーー私の彼氏は怜君…。
香帆は自分に呪文を掛ける。
腕を掴んでいた怜の手は辿るように脇へと滑り胸へと進む。
Tシャツを通して怜の温もりを感じ出す。
「香帆ちゃん…」
怜が耳元で熱い息を吐く。
ふと…隣のバンガローが気になった。
今頃…和馬もこんな風に涼葉に触れてるのだろうか…。
Tシャツの裾から手が忍び込む。
怜の掌を地肌に感じて身体が震える。
「ん…」
思わず漏れた自分の声に涼葉のそれと重なる。
和馬と同じ部屋に入る涼葉。
和馬に抱かれる為に化粧をする涼葉…。
何度も何度も香帆を優しく愛したあの身体で、涼葉を愛するのだろうか…。
「…イヤ…」
小さく呟く。
ジワジワと涙腺が緩む。
「イヤ!イヤ‼︎」
「香帆ちゃん?」
「イヤーッ‼︎」
「香帆ちゃん⁉︎」
怜は驚いて身体を離す。
「どうしたの?…俺とするのそんなにイヤ?」
「あ…ごめん…そうじゃない…けど…」
何て言っていいのか分からない。
かと言って、本当の事も言えない。
和馬が自分以外の女の子を抱いてる所を想像したくない、なんて…。
「けど…?」
「ごめん…ちょっと疲れちゃって…そんな気に…」
「…そっか…初対面ばっかだったもんね。焦ってないって言ったら嘘になるけど、無理矢理はしたくないからさ…でも、抱き締めて寝ていい?これぐらいは許してよ」
香帆はコクンと頷いた。
布団の中で背中から怜が抱き締めてくる。
それはとても暖かくて気持ち良い…。
お尻に怜の欲がずっと押し当てられたままだ。
「仕方ないだろ…俺、メチャクチャしたかったんだから…」
「うん、ごめん…」
怜の温もりに包まれて香帆は眠った。
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