君が夢から覚めるまで
翌朝、歯を磨きながら溜息を吐く怜がいた。
「どうした?元気ないな」
「寝不足です…」
「っ‼︎」
寝不足になる程、香帆を…⁉︎
胃の奥が、かあっと怒りで熱くなる。
「そ、そんなにお楽しみだったのか?」
「いえ…その逆です」
「逆?」
思わず怜の顔を覗き込む。
「出来なかったんですよ…なんか香帆ちゃんかなり疲れちゃったみたいで。俺、すっげー楽しみにしてたし、緊張もしてたけど、もうヤる気満々だったのに…。けど、イヤって言われちゃどうしようもないじゃないですか…。それでも無理矢理ヤることも出来たけど香帆ちゃんだけには嫌われたくないし…お陰で…眠れなかった」
残念そうな怜と裏腹に和馬は嬉しくって仕方なかった。
顔がニヤけてしまったのがバレないよう勢いよく顔を洗って誤魔化した。
「でも、おっぱいは触りましたよ。めちゃくちゃ柔らかくて気持ち良かった〜」
和馬は手が震えているのが自分でも分かった。
「香帆ちゃんがあんまり可愛いから、俺つい」
「やめろっ‼︎」
これ以上聞きたくない。
つい、大声をあげてしまった。
怜がビクッとして驚く。
「お前の惚気話しなんて聞きたくねぇよ」
ポカンと軽く怜の頭を叩いた。
だが、気分は複雑だった。
香帆はよく寝れただろうか…。
先程ちらっと見た香帆はスッキリした顔をしていた。
香帆は昔からよく寝る奴だった。
高校時代…二人はよく生徒会室で待ち合わせをしていた。
1時間、余分に授業がある和馬を香帆は生徒会室で待っていた。
和馬が来ると、かならずと言っていいほど香帆は寝ていた。
その寝顔が可愛くて、可愛くて…起こすのを何度ためらったことか…。
「おはようございます、香帆さん」
「あ、おはよう涼葉ちゃん」
香帆と目が合う。
「おはよう」
「お、おはよう、ございます」
香帆はすぐに目をそらし、和馬の横を通り過ぎようとした。
「Did you sleep well?」
すれ違いざまにつぶやく。
香帆が振り返ったのが分かったが、和馬はフッと笑って歩き出した。
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