君が夢から覚めるまで
3.ご褒美
怜は一見、イマドキの高校生というチャラさがあったが、根は真面目だった。
香帆が教えることにちゃんと理解しようとするし、解らない事は素直に聞いてくる。
今まで何人か担当した事があったが、一番やりやすい生徒だった。
「ねえ先生。今度のテストで100番以内に入ったら、ご褒美ちょうだいよ」
「ご褒美?良いよ。けど、私も学生だからね、マンション欲しいとか言われても困るけど」
「マンション?それもいいね〜。そしたらさ、一緒に住もうよ。毎日先生に勉強見てもらえるし」
香帆のくだらない冗談に怜はすぐ乗ってきた。
「そんなに勉強好きだった?だったら、ご褒美は塾並みの合宿でもする?寝ても覚めても勉強ばっか…勉強三昧」
「ごめんなさい、マンションの話はなかった事で」
怜は素直に頭を下げた。
あまりの正直さに香帆は笑った。
「勉強は嫌いだけどさ、先生の授業は好きだよ。解りやすいし、成績も上がってる気がするし」
「本当?嬉しい。家庭教師冥利に尽きるわね」
「だからさ、今度のテスト、頑張れば100番以内に入れるような気がするんだ。そしたらさ、ご褒美に…デートしない?」
「デート?」
もっと物をねだられるかと思ってたからキョトンとした。
「うん。花火大会、一緒に行かない?…それとも…もう誰かと行く約束しちゃった?」
「約束はしてないけど…いいの?彼女…楽しみにしてるんじゃない?」
怜の腕に絡みついていた彼女を思い出す。
「あ、うん。彼女は…友達と行くみたいだからさ」
友達…?
こうゆうお祭り事は友達よりも彼氏と行きたいものじゃないのだろうか…。
都会のイマドキの高校生は『彼氏<友達』なのだろうか…。
2年前までは自分も高校生だったが、事情が変わって来てるようだ。
「ダメ…かな…?」
怜がちょっと不安そうに言う。
「あ、ううん。ダメじゃない。けど、私なんかでいいの?ってか、そんなのご褒美になる?」
「なるよ!なるから言ってんじゃん!じゃあ、100番以内に入ったらデート約束だよ!」
「うん」
やったー‼︎とひと叫びし、怜は一気に元気になった。
「よーし、家帰ったらもうちょっと頑張ろっ!」
花火デートがご褒美になるとは思えなかったが、怜が今以上に勉強を頑張る気になってくれるなら、それでい良いと思った。
「…本当はさ、こう見えても結構緊張したんだよ。ご褒美にデートって言うのも。断られたらどうしようって…」
「そんなの…可愛い生徒のためだもん、断るわけないじゃん。100番目指して一緒に頑張ろ」
一瞬、怜は顔を強張らせたが、ニッコリ笑い、うんと頷いた。
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