君が夢から覚めるまで
ビーチバレーは二人一組になって試合をしていた。
怜は和馬とペアを組んでいた。
香帆はグランパス号に掴まりながら、見ていた。
熱いラリーが続く。
怜がトスを上げる。
和馬がアタックを決める。
相手チームはそれを受けれなかった。
「やったー!」
思わず声に出して喜んだ。
怜と和馬がハイタッチをする。
すると今度は涼葉がピョンピョン飛び跳ねながら近寄り二人にハイタッチを求めた。
惜しげも無く晒されたその大きな胸はいやらしいほど上下左右に揺れ、誰もが視線を奪われただろう。
『良いよな〜先輩』
そう呟いた怜の言葉を思い出す。
ーーーバカみたい、私…。
香帆はクルッと反転し、ビーチに背を向けた拍子に近くにいた人とドンッと背中がぶつかった。
「あ、すみません」
お互い謝って、そのまま泳ぎ出した。
涼葉の揺れる胸が頭から離れない…。
ふと、胸元がスッと涼しくなる。
見ると、ビキニのトップスがプカプカと浮いていた。
「えっ⁉︎」
香帆は慌てて見えないようにグランパス号にしがみついた。
さっき、ぶつかった時に背中の紐が緩んで外れてしまったのだ。
首と背中の二点で留めるタイプの物だから、今はかろうじて首元からぶら下がってるだけの状態だ。
香帆はひと気のない方へ泳ぎ進めた。
ーーー誰にも気付かれないうちに直さなきゃ!
けど…ひと気のないとこまで来てから気付いた。
足が付かない…。
両手でないと、紐は結べない。
だが、グランパス号から手を離してしまうと溺れてしまう…どうしよう…!
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