君が夢から覚めるまで
「香帆ー!何やってんだよ!」
振り向くと和馬がこっちへ向かって泳いで来た。
「やだ、来ないで!」
「はぁ?何言ってんだよ。危ねぇだろ、こんな深いとこまで来たら」
どんどん泳ぎ進めてくる。
香帆は逃げようとするが、呆気なく和馬にグランパス号の尻尾を掴まれる。
「ほら、戻るぞ」
「やだ!待って‼︎」
「何?」
香帆は首まで浸かり気付かれないようにした。
「何もないなら戻るぞ!」
「やだやだ!待って‼︎」
「だから何だよ⁉︎」
香帆は渋々ビキニが外れてる事を話した。
「しゃあねぇな、俺が直してやるよ」
「え、やだ!」
「じゃ、自分で出来んのかよ」
「…」
「俺に対して今更恥ずかしがる事ねぇだろ…」
和馬は香帆の背中に回り、立ち泳ぎをしながらビキニに手を伸ばす。
「それにしても…相変わらず貧相な身体してんな」
ズキンと胸が痛み、頭がカァッとなる。
「どうせ私は涼葉ちゃんみたいな巨乳じゃないですよ」
「はぁ?何言ってんだよ、涼葉は関係ないだろ」
お前とは関係ない…そう言われたような気がしてまた傷付いてる自分がいた。
和馬の指が僅かに背中に触れる。
全神経がそこに集中してるようで、この今の気持ちがそこから和馬に伝わってしまうのではないかと思った。
「巨乳が好きだなんて、知らなかった」
「別に…胸で選んでるわけじゃねぇよ」
涼葉はとっても可愛くていい子だ。
涼葉を選んだ理由は胸だけじゃない。
それを和馬の口から聞くのは凄く惨めだった。
「よし、結べたぞ。これで良いよな?戻るぞ」
「ありがと…」
和馬はグランパス号を引っ張って泳ぎ出した。
「お前さ…隠してるつもりかもしんねぇけど、この距離から見ればバレバレだぞ」
「何が?」
「キスマーク」
「え、どこ⁉︎」
「首元んとこ。結び目で隠してるつもりだろうけど。怜に言っとけ、水着着る前は付けんなって」
「…」
怜のはずがない…怜と会うのは二週間ぶり…だったら…。
ーーー亮君…⁉︎
< 57 / 61 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop