君が夢から覚めるまで
24.イチゴフラッペ
香帆が怜とキスをしてるのを見て、和馬はイラついた。
怜が強引にしただけだろうが、それでも腹が立った。
だから、怜をビーチに呼び寄せた。
ビーチバレーに夢中になってる間にさっきまで近くにいた香帆がいないことに気付いた。
見渡すと遠くに香帆のグランパス号が見えた。
「何、あんな深いとこまで行ってんだよ、あいつ!」
怜はビーチバレーで疲れ切った様子で、日陰で休んでいた。
香帆はビキニのトップスが外れてひと気がないとこまで来てしまったらしかった。
紐を結び直すフリをして、さりげなく香帆の身体に触れる。
わざとゆっくり紐を結びながら香帆の背中を眺める。
この距離まで近付くのは肝試し以来だ。
ふと、首の結び目の所にアザが見える。
キスマークか…?
この綺麗な背中を、身体を、怜は何度唇を寄せただろう…。
考えると全身の血が煮えたぎるようだった。
「香帆ちゃん、大丈夫?」
ビーチまで戻ると怜が心配そうに駆け寄って来た。
「うん、椎名さんが助けてくれたら」
「先輩、ありがとうございました」
「いいよ、たまたま気付いただけだから」
「私…ちょっと疲れたから休んでくるね」
香帆はテントの方へ走って行った。
それを怜は見送る。
「香帆ちゃん…なんか言ってました?」
「何が?」
「ここんとこお互いバイトとかでずっと忙しくて、今日二週間振りに会ったんですよ。怒ってんのかな〜と思って」
「俺が聞いてきてやるよ」
和馬は歩き出した。
二週間ぶり…二週間前に付けられた痕がまだ残ってるわけがない…。
あれはどう見ても、この数日だ。
カキ氷を買ってテントへ行くと香帆が一人で膝を抱えてうずくまっていた。
パーカーを羽織りフードまで被り明らかに首元を隠しているようだった。
「大丈夫か?」
「うん、平気。さっきはありがとう」
はい、とカキ氷を香帆に手渡す。
「イチゴミルク、まだ好きか?」
「わ、ありがとう。覚えてたんだ!」
香帆の顔がパアッと明るくなってホッとした。
「二年近く一緒にいたんだ、忘れるわけねぇだろ…」
「…そっか…」
シャクシャクと崩しながら香帆はカキ氷を頬張った。
「怜に会うのって二週間ぶりなんだってな…お前、浮気してんの?」
「違う!これはっ⁉︎」
「これは、何?」
「…知らなかったの、付けられてたなんて…」
香帆の声がどんどん小さくなっていく。
知らなかっただと?
その距離に男がいたのに…?
「やっぱり、キスマークだったんだ」
香帆はハッとして和馬の顔を見た。
「カマかけたの?」
「ひでぇ言い方するな…で、誰?」
「…元彼…」
自分、じゃない…元彼…。
ズキンと胸が痛む。
「何でその元彼にキスされてんだよ。本当に『元』かよ?終わったと思ってんのはお前だけじゃねぇの?」
「そんな事ないっ!別れようって言ったのは向こうなんだよ!それに…別れてからは一年近く会ってなかったんだから…」
その男にフラれなければ、香帆は怜と付き合う事はなかっただろうか…?
そしたら、この最悪な状態で香帆に再会する事もなかっただろうか…?
「じゃあ、なんでまたその元彼と会ってんだよ」
「…知らなかったの、本当に…」
「何が?」
「…怜君が…彼の弟だったなんて…」
「…え…?」
思わず息を飲む。
「亮君とはバイト先で知り合ったの。一人暮らしだったし、兄弟がいるなんて話もした事なかったし。怜君にお兄さんがいるって知ったのは、付き合い出してからなの、本当だよ」
香帆が真剣な目で訴える。
嘘ではない事はよく分かった。
「けど…私が怜君と付き合ってる事が気に入らないらしくて、嫌がらせを…」
「香帆が今日、怜と会う事を知っててキスマークか…隙があるって言うか、油断し過ぎじゃねぇの?」
「反省してると思ったから…」
「何を?」
「…」
「香帆…?」
香帆は膝を抱え、おでこを付けて顔を隠した。
そして…バイト先の店長の婚約祝いの夜、元彼の家で押し倒された話をした。
思わず体が震え、返す言葉を失った。
「もう…関わらない方がいい…」
「分かってるよ‼︎もう終わってんだから、そっとしておいて欲しいのに…別れようって言ったくせに…自分から離れて行ったくせに…」
傷付いてる香帆を思いっきり抱き寄せたかった。
だが、香帆のその言葉そのままそっくり自分にも言われてる気分になった。
三年前、香帆との交際を終わらせたのは自分だ…。
今、香帆にしてる事も、しようとしてる事も、香帆にとって迷惑でしかないのかもしれない…。
「俺も…そうだよな…悪い…」
和馬は小さく溜息を吐いて、テントを出た。
怜が強引にしただけだろうが、それでも腹が立った。
だから、怜をビーチに呼び寄せた。
ビーチバレーに夢中になってる間にさっきまで近くにいた香帆がいないことに気付いた。
見渡すと遠くに香帆のグランパス号が見えた。
「何、あんな深いとこまで行ってんだよ、あいつ!」
怜はビーチバレーで疲れ切った様子で、日陰で休んでいた。
香帆はビキニのトップスが外れてひと気がないとこまで来てしまったらしかった。
紐を結び直すフリをして、さりげなく香帆の身体に触れる。
わざとゆっくり紐を結びながら香帆の背中を眺める。
この距離まで近付くのは肝試し以来だ。
ふと、首の結び目の所にアザが見える。
キスマークか…?
この綺麗な背中を、身体を、怜は何度唇を寄せただろう…。
考えると全身の血が煮えたぎるようだった。
「香帆ちゃん、大丈夫?」
ビーチまで戻ると怜が心配そうに駆け寄って来た。
「うん、椎名さんが助けてくれたら」
「先輩、ありがとうございました」
「いいよ、たまたま気付いただけだから」
「私…ちょっと疲れたから休んでくるね」
香帆はテントの方へ走って行った。
それを怜は見送る。
「香帆ちゃん…なんか言ってました?」
「何が?」
「ここんとこお互いバイトとかでずっと忙しくて、今日二週間振りに会ったんですよ。怒ってんのかな〜と思って」
「俺が聞いてきてやるよ」
和馬は歩き出した。
二週間ぶり…二週間前に付けられた痕がまだ残ってるわけがない…。
あれはどう見ても、この数日だ。
カキ氷を買ってテントへ行くと香帆が一人で膝を抱えてうずくまっていた。
パーカーを羽織りフードまで被り明らかに首元を隠しているようだった。
「大丈夫か?」
「うん、平気。さっきはありがとう」
はい、とカキ氷を香帆に手渡す。
「イチゴミルク、まだ好きか?」
「わ、ありがとう。覚えてたんだ!」
香帆の顔がパアッと明るくなってホッとした。
「二年近く一緒にいたんだ、忘れるわけねぇだろ…」
「…そっか…」
シャクシャクと崩しながら香帆はカキ氷を頬張った。
「怜に会うのって二週間ぶりなんだってな…お前、浮気してんの?」
「違う!これはっ⁉︎」
「これは、何?」
「…知らなかったの、付けられてたなんて…」
香帆の声がどんどん小さくなっていく。
知らなかっただと?
その距離に男がいたのに…?
「やっぱり、キスマークだったんだ」
香帆はハッとして和馬の顔を見た。
「カマかけたの?」
「ひでぇ言い方するな…で、誰?」
「…元彼…」
自分、じゃない…元彼…。
ズキンと胸が痛む。
「何でその元彼にキスされてんだよ。本当に『元』かよ?終わったと思ってんのはお前だけじゃねぇの?」
「そんな事ないっ!別れようって言ったのは向こうなんだよ!それに…別れてからは一年近く会ってなかったんだから…」
その男にフラれなければ、香帆は怜と付き合う事はなかっただろうか…?
そしたら、この最悪な状態で香帆に再会する事もなかっただろうか…?
「じゃあ、なんでまたその元彼と会ってんだよ」
「…知らなかったの、本当に…」
「何が?」
「…怜君が…彼の弟だったなんて…」
「…え…?」
思わず息を飲む。
「亮君とはバイト先で知り合ったの。一人暮らしだったし、兄弟がいるなんて話もした事なかったし。怜君にお兄さんがいるって知ったのは、付き合い出してからなの、本当だよ」
香帆が真剣な目で訴える。
嘘ではない事はよく分かった。
「けど…私が怜君と付き合ってる事が気に入らないらしくて、嫌がらせを…」
「香帆が今日、怜と会う事を知っててキスマークか…隙があるって言うか、油断し過ぎじゃねぇの?」
「反省してると思ったから…」
「何を?」
「…」
「香帆…?」
香帆は膝を抱え、おでこを付けて顔を隠した。
そして…バイト先の店長の婚約祝いの夜、元彼の家で押し倒された話をした。
思わず体が震え、返す言葉を失った。
「もう…関わらない方がいい…」
「分かってるよ‼︎もう終わってんだから、そっとしておいて欲しいのに…別れようって言ったくせに…自分から離れて行ったくせに…」
傷付いてる香帆を思いっきり抱き寄せたかった。
だが、香帆のその言葉そのままそっくり自分にも言われてる気分になった。
三年前、香帆との交際を終わらせたのは自分だ…。
今、香帆にしてる事も、しようとしてる事も、香帆にとって迷惑でしかないのかもしれない…。
「俺も…そうだよな…悪い…」
和馬は小さく溜息を吐いて、テントを出た。