言えないこの気持ち
言えないこの気持ち 1章
自覚
ピーンポーン
朝8時前。住宅街のある所で、インターホンの音が鳴り響く。
その音が鳴った数秒後、家の中からバタバタと走ってくる音が外からでも聞こえてくる。
「ごめん!待たせちゃった!」
「いつものことだろ」
少し息切れして謝るのは、この家の主、菊岡まい。背骨より少し下まで伸びている髪は、絡まりもなく綺麗に整えられている。
そんなまいに対して、笑いながら返事をするのは、まいの幼なじみの大崎晴翔。
「もうすぐ修学旅行なのに、そんなんで大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ!友達が起こしてくれるって言ってたし!」
「自分で起きないあたり、まいらしいわ」
「なにそれ、褒めてるの?」
「褒めてる褒めてる(笑)」
「バカにしてるでしょ?!」
いつもの通学路を、二人で歩いていく。他愛のない会話で、笑顔になる。この時間が、まいにはとても幸せだった。
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