言えないこの気持ち
学校に着くと、席も前後のまいと晴翔は、同じ教室に入って机に荷物を置く。
「まい、おはよ!」
「優奈おはよ~」
「今日も夫婦で登校とは羨ましいですわぁ」
「ちょ、ちょっと!違うってば~」
席に着くと同時に、挨拶をしてきたのは同じクラスで親友の林田優奈(はやしだゆな)。優奈は悪い顔でまいをいじるのが最近の楽しみであるとかないとか。
「まだ告白してないの?早くしないと誰かに取られちゃうぞ~!昨日も告白されたって男子が冷やかしてたし」
「えっ……まぁ……うん…」
そんなことはわかっている。けど。
もし気持ちを伝えて、今の関係が壊れてしまったら?
登下校を共にできなくなったら?
気まずさから喋ることさえもできなくなったら───。
「(そんなの……絶対嫌だよ)」
まいは、溢れ出そうになる涙を必死に堪える。
急に俯いて黙ってしまったまいを、慌てて慰めようとする優奈。
「ま、まい!!ごめんごめん、脅しすぎだ!泣かないで~~」
「泣いてない~~~~」
目の前に張本人がいるのもあって、声を抑えて会話する二人に晴翔が、
「なにコソコソやってんの?つかまい、なんで涙目なんだよ」
と、突っ込みをいれてくる。ギクッと肩をびくつかせて晴翔の方を向いたまいと優奈は、わかりやすく慌てふためく。
「あ、あくびが止まらなくて……もう眠すぎて困っちゃう」
「ほんとにまいはよく寝る子だからね、早く寝なさいよ?」
「あはは~…」
「ふぅーん?ま、確かにな。だがおかしいな。寝る子は育つと言うのに、お前を見ると……おやおや??育っていませんなぁ」
「なにようっさいわね!」