愛と夢と…
いよいよ夏本番の8月。
うだるような暑さが連日続いている。
しかし、私たちはそんな暑さから束の間に解放されることとなった。
「わあ…!すごい!」
理央の感嘆の声に私もつられて顔をあげる。
緑がいっぱいの自然豊かな小道を登ったその先に、大きな洋館風の建物が見えてきた。
吉沢くんの別荘は、海岸近くの避暑地でもあるリゾートタウンに存在していた。
白い砂浜に青い海というベタすぎるけどとても綺麗な海岸沿いの道を通り過ぎるとすぐに今私たちが歩いているこの小道がある。
本当にすごい建物だ。
まさに理央の言葉のとおりである。
別荘というか、これがメインの家だといっても過言ではないぐらいの大きさだ。
「こりゃすげーわ…」
「ホテルじゃん!何人泊まれんのこれ。」
クラスメイトが口ぐちに驚きの声をあげる。
40人が泊まれる別荘なんて早々にない。
みんなが驚くのは言うまでもない。
別荘の門をくぐり敷地に入る。
庭は綺麗に整備されていて、これは本当に別荘なのか?と疑いたくなるほどだ。
建物に入ると吉沢くんが簡単に案内をしてくれた。
「基本、この家適当に使ってもらって大丈夫だから。入っちゃダメなとことかないからとりあえず迷わないようにだけ気をつけて。」
必要最低限のこと、いや、もしかしたら最低限のことすら伝えてないかもしれないと思うほどさらりとした説明。
吉沢くんらしいといえば吉沢くんらしい。
「何か聞きたいことあったらその都度聞いて。はい、じゃあこっからは委員長パス。」
「え、そんだけ!?」
まともな説明をほとんどしていない吉沢くんに苦笑しながら委員長がバトンを引き継いだ。
「じゃあ…とりあえず今日からの流れ確認します。3泊4日です。まず今日は…」
今日から3泊4日で集中的に文化祭の準備を行う。
おそらくここまで気合の入ったクラスはうちぐらいだろう。
まず、1日目である今日はすでにお昼もまわっているため、部屋の割り当てをしたり明日からの作業の確認をするなどで、特に大きなことができる様子ではない。
とにかく、明日からの作業がスムーズにいくための準備に徹することとなった。
2日目はひたすらに作業に集中する。
もし余裕ができたら夜に浜辺で花火をすることになったため、おそらくみんな死に物狂いで作業するだろう。
そして、この合宿の到達目標は3日目に劇をひとまず通してみることにある。
というか、通しができなければこの合宿の意味がない。
「というわけで、まずは文化祭の準備第一だから!!!遊びはその次だから!!ほんと、文化祭の準備第一だから!!!」
委員長の熱のこもった言葉にクラスメイトから笑いが溢れる。
たしかに、何も進まず遊んでだけいたら元も子もない。
「まず部屋分けよう。で、それが終わったら各係りで明日からどう進めるか打ち合わせ。全部みんなに任せるのでよろしく。吉沢、部屋本当に自由にしていいの?」
「うん、いいよ。」
「おっけ。じゃ空いてる部屋でそれぞれ活動開始。」
委員長の言葉を契機に、まずは男女に分かれ部屋の割り振りを始めた。
私たちのクラスの女子はありがたいことに細かいことを気にするような面々ではない。
よって、あみだくじで適当に5人ずつ4つのグループに分かれた。
幸いにも理央と同じグループになれた私は、部屋に荷物を置いてすぐに吉沢くん探しを始めた。
吉沢くんが向かった方向だけはしっかり確認しておいたので、とりあえずその方向に向かってみる。
「ほんと、ホテル…」
吉沢くんを探しながら建物内をウロウロすればするほど、本当にホテルにしか思えなくなってくる。
私たちが泊まる各部屋にはシングルベッドやダブルベッドがいくつかずつ用意されている。
どうやらお風呂もいくつかあるみたいだし、通りがてらに大きな食堂もあった。
…というか、さっきから全く吉沢くんを見つけられない。
広すぎてどこにいるのか皆目見当がつかない。
「ねえ、吉沢くん見なかった?」
通りすがりのクラスメイトに声をかける。
メンバーてきに大道具担当の係の人たちだ。
「さあ…見てないなあ、気付いたら部屋からいなくなってたし。」
「そっか」
「連絡とればいいんじゃん。そんな古典的な方法で探したっていつまでも見つからないよ。」
そう言って、メンバーの1人がスマホを軽くあげて私に見せた。
「んー…でも、吉沢くんの連絡先知らないんだよね。」
「え!!あんなに仲良いのに!?」
私の言葉に女子たちが顔を見合わせて驚いている。
「今までどうやって連絡とってたの?」
「全部学校で済ませてたから。」
「そうなんだ。なんか意外、びっくりした。」
正直、今まで連絡先を知らなくても困ることはなかった。
下手したら今初めて困っているかもしれない。
目の前のクラスメイトたちも吉沢くんの行方を知らないみたいだし、もう少し古典的な方法で探すしかないな。
「途中で止めてごめんね。ありがとう。」
クラスメイトたちと別れ、再び捜索を開始した。
歩いても歩いても新しい場所にでる。
このまま会えなかったらどうしようなんて馬鹿なことまで考え始めてしまった。
廊下の突き当たりに差し掛かったので道なりに右へ曲がった。
その瞬間。
「わ!!!」
「あ、」
目の前に現れた吉沢くんに私は驚きを隠せなかった。
対して彼はそんなに驚いていない。
「探してたんだけど。」
「それはこっちのセリフ。」
私たちはお互いを探しまわっていたらしい。
とはいえ、あてもなく探し回っていたのは私だけで、家主である彼はきちんと順序立てて探してたのだろうけど。
「とりあえずピアノある部屋あるからそこ行こうか。」
「ここにまでピアノあるの?」
「うん、かなり古いけどね。前の持ち主が置いていった。」
私は彼のとなりに並び、ノコノコとついて行った。
うだるような暑さが連日続いている。
しかし、私たちはそんな暑さから束の間に解放されることとなった。
「わあ…!すごい!」
理央の感嘆の声に私もつられて顔をあげる。
緑がいっぱいの自然豊かな小道を登ったその先に、大きな洋館風の建物が見えてきた。
吉沢くんの別荘は、海岸近くの避暑地でもあるリゾートタウンに存在していた。
白い砂浜に青い海というベタすぎるけどとても綺麗な海岸沿いの道を通り過ぎるとすぐに今私たちが歩いているこの小道がある。
本当にすごい建物だ。
まさに理央の言葉のとおりである。
別荘というか、これがメインの家だといっても過言ではないぐらいの大きさだ。
「こりゃすげーわ…」
「ホテルじゃん!何人泊まれんのこれ。」
クラスメイトが口ぐちに驚きの声をあげる。
40人が泊まれる別荘なんて早々にない。
みんなが驚くのは言うまでもない。
別荘の門をくぐり敷地に入る。
庭は綺麗に整備されていて、これは本当に別荘なのか?と疑いたくなるほどだ。
建物に入ると吉沢くんが簡単に案内をしてくれた。
「基本、この家適当に使ってもらって大丈夫だから。入っちゃダメなとことかないからとりあえず迷わないようにだけ気をつけて。」
必要最低限のこと、いや、もしかしたら最低限のことすら伝えてないかもしれないと思うほどさらりとした説明。
吉沢くんらしいといえば吉沢くんらしい。
「何か聞きたいことあったらその都度聞いて。はい、じゃあこっからは委員長パス。」
「え、そんだけ!?」
まともな説明をほとんどしていない吉沢くんに苦笑しながら委員長がバトンを引き継いだ。
「じゃあ…とりあえず今日からの流れ確認します。3泊4日です。まず今日は…」
今日から3泊4日で集中的に文化祭の準備を行う。
おそらくここまで気合の入ったクラスはうちぐらいだろう。
まず、1日目である今日はすでにお昼もまわっているため、部屋の割り当てをしたり明日からの作業の確認をするなどで、特に大きなことができる様子ではない。
とにかく、明日からの作業がスムーズにいくための準備に徹することとなった。
2日目はひたすらに作業に集中する。
もし余裕ができたら夜に浜辺で花火をすることになったため、おそらくみんな死に物狂いで作業するだろう。
そして、この合宿の到達目標は3日目に劇をひとまず通してみることにある。
というか、通しができなければこの合宿の意味がない。
「というわけで、まずは文化祭の準備第一だから!!!遊びはその次だから!!ほんと、文化祭の準備第一だから!!!」
委員長の熱のこもった言葉にクラスメイトから笑いが溢れる。
たしかに、何も進まず遊んでだけいたら元も子もない。
「まず部屋分けよう。で、それが終わったら各係りで明日からどう進めるか打ち合わせ。全部みんなに任せるのでよろしく。吉沢、部屋本当に自由にしていいの?」
「うん、いいよ。」
「おっけ。じゃ空いてる部屋でそれぞれ活動開始。」
委員長の言葉を契機に、まずは男女に分かれ部屋の割り振りを始めた。
私たちのクラスの女子はありがたいことに細かいことを気にするような面々ではない。
よって、あみだくじで適当に5人ずつ4つのグループに分かれた。
幸いにも理央と同じグループになれた私は、部屋に荷物を置いてすぐに吉沢くん探しを始めた。
吉沢くんが向かった方向だけはしっかり確認しておいたので、とりあえずその方向に向かってみる。
「ほんと、ホテル…」
吉沢くんを探しながら建物内をウロウロすればするほど、本当にホテルにしか思えなくなってくる。
私たちが泊まる各部屋にはシングルベッドやダブルベッドがいくつかずつ用意されている。
どうやらお風呂もいくつかあるみたいだし、通りがてらに大きな食堂もあった。
…というか、さっきから全く吉沢くんを見つけられない。
広すぎてどこにいるのか皆目見当がつかない。
「ねえ、吉沢くん見なかった?」
通りすがりのクラスメイトに声をかける。
メンバーてきに大道具担当の係の人たちだ。
「さあ…見てないなあ、気付いたら部屋からいなくなってたし。」
「そっか」
「連絡とればいいんじゃん。そんな古典的な方法で探したっていつまでも見つからないよ。」
そう言って、メンバーの1人がスマホを軽くあげて私に見せた。
「んー…でも、吉沢くんの連絡先知らないんだよね。」
「え!!あんなに仲良いのに!?」
私の言葉に女子たちが顔を見合わせて驚いている。
「今までどうやって連絡とってたの?」
「全部学校で済ませてたから。」
「そうなんだ。なんか意外、びっくりした。」
正直、今まで連絡先を知らなくても困ることはなかった。
下手したら今初めて困っているかもしれない。
目の前のクラスメイトたちも吉沢くんの行方を知らないみたいだし、もう少し古典的な方法で探すしかないな。
「途中で止めてごめんね。ありがとう。」
クラスメイトたちと別れ、再び捜索を開始した。
歩いても歩いても新しい場所にでる。
このまま会えなかったらどうしようなんて馬鹿なことまで考え始めてしまった。
廊下の突き当たりに差し掛かったので道なりに右へ曲がった。
その瞬間。
「わ!!!」
「あ、」
目の前に現れた吉沢くんに私は驚きを隠せなかった。
対して彼はそんなに驚いていない。
「探してたんだけど。」
「それはこっちのセリフ。」
私たちはお互いを探しまわっていたらしい。
とはいえ、あてもなく探し回っていたのは私だけで、家主である彼はきちんと順序立てて探してたのだろうけど。
「とりあえずピアノある部屋あるからそこ行こうか。」
「ここにまでピアノあるの?」
「うん、かなり古いけどね。前の持ち主が置いていった。」
私は彼のとなりに並び、ノコノコとついて行った。