愛と夢と…
文化祭の役割を決めた日から2週間が経った。
「理央たちは何か準備とか始めた?」
「ううん。だってまだ台本ないもん。文芸部の玲華ちゃんが書いてるって。高校生の小説コンテスト的なやつで賞とったこともあるらしいよ。」
「へぇーすごいんだね。」
「ね、びっくり。多才な人が多いね。愛菜も曲作れるなんて知らなかった。」
「いやぁ…作れるなんてレベルじゃないけど…。そういう理央だってまさか役者やるとはびっくり。しかもヒロイン。」
「でしょ?小さい頃の劇団経験をここで生かさなくちゃ!」
移動教室のため理央と廊下を歩いていると。
「愛菜ちゃん!ちょっと良い?」
呼ばれた声に振り返ると、さっきまで理央との話題に出ていた文芸部の玲華ちゃんが小走りでこちらに向かってきた。
「どうしたの?」
「これ。まだ台本にはなってないんだけど脚本はできたの。楽曲制作ってどの役割よりも圧倒的に時間かかると思うから今のうちから何となくイメージ持って欲しいから渡しちゃうね。」
「貰っちゃっていいの?ちゃんと出来上がってからでも大丈夫だよ?」
「大丈夫大丈夫。大枠はこの通りだから。今のところ曲流したい場面には印つけてあるから、何となく曲のイメージ膨らませてくれると助かる。」
「分かった。わざわざありがとう。」
隣で興味津々な理央に脚本を渡す。
理央は嬉しそうに読み始めた。
「でね、もう一つお願いがあって。これ吉沢くんにも渡しておいて貰えない?教室にいないんだよね。会った時で良いから。」
「うん、分かった。」
玲華ちゃんからもう一冊の脚本を貰い、私たちは3人で次の授業の教室へ向かった。
案の定、吉沢くんはいなかった。