スカシユリ
翌日、教師へ提出用の入部希望届にも「演劇部」と記入して、担任に提出した。
少し驚いていたようだったが、頑張れよ、と声をかけてくれた。
朝のHRが終わると、私は千穂のもとに向かった。

『おはよう』
千「おはよ、昨日はどうだった?」
『入部することに決めた』
千「え、もう?」
『うん。千穂が背中押してくれたおかげ、ありがとう』
千「私は何もしてないけど、決まってよかったよ」

昨日演劇部の見学に行く勇気をくれた千穂はというと、
小学生の頃から続けているバスケ部に入部したようだった。

最後の授業が終わり、私は演劇部の部室へと向かっていた。
というのも、昨日の見学後――。

望「じゃあ、早速明日の放課後、部室に来てくれる? 練習の様子とか見ておいてほしいし」

と言われたからだった。
部室に到着すると、すでに何人か集まっていた。

誉「揃ったね。今年入部する1年は6人。まずは自己紹介からしていってくれるかな」

先輩たちの自己紹介が終わると、1年へと移った。
男子は『真田 郁実(さなだ いくみ)』、『二宮 宙(にのみや そら)』、『皇 永久(すめらぎ とわ)』、『玉城 晋太郎(たまき しんたろう)』の4人、
女子は『三船 朝日(みふね あさひ)』と私の2人だった。

全員の自己紹介が終わると、再び部長が口を開いた。

誉「じゃあ、早速始めようか」

実際に練習に参加してみると、分かってはいたものの、かなりハードだった。
基礎体力作りの一環でもある筋トレを終えたころには、少し息が上がっていた。

『……はぁ』
誉「なに、もう疲れたの? だらしないなぁ」
『……疲れてません』
誉「そう? それならいいけど。これぐらいで疲れてたんじゃ、ついてくるなんて無理だからね」

それだけ言うと、先輩はさっさと背を向けて行ってしまった。

(何かムカつく……)

決して甘く見ていたわけではなかったものの、確かに疲れてしまっているのは事実だったため、言い返すことができないのが余計に悔しかった。
それからは、校舎から体育館へと続く渡り廊下で発声練習、体力づくりの筋トレやランニングを行う日々が続いた。
大変ではあったものの、部員同士で好きな舞台の話をしたり先輩たちの演技を観たりする時間は楽しくて、何より、体力がついてきたことを実感できるようになったのが嬉しかった。

そんな日々が続いていたある日のこと、いつものように発声練習を行っていた私は、ふと視線を感じ、何気なく振り返った。






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