ただ好きになっただけ。
ふう、と大きく息をついた。
近頃はため息をつくことがめっきり増えたような気がする。
何かを諦めるように、仕方がないのだと自分に言い聞かせるように。
「ママ、ママおいでー」
スマートフォンから目を離し、ソファに横になろうとすると、
さっき眠りについたばかりのはずの息子の声がした。
今日も朝まで一人でぐっすりとは眠ってくれず、忙しい日々の中で
母の私がゆっくり過ごせる時間などほとんどない。
「ママ―!」
先ほどよりも大きな涙まじりの声が聞こえてきて、
今行くよー、と慌てて声をかける。
まだまだ甘え盛りの三歳は寝るときにはお気に入りの人形と
私のトントンと背中を叩くリズムがないと寝られない。
息子が眠った後に家事をしよう、と思っている主婦にとって、
眠りが浅く何度も起きてしまう息子はかなりの難敵だ。
それでも、一緒に布団に入るとママ大好き、と言ったり、
寝ぼけて抱き着いてきてくれたりする息子は最高の癒しでもある。
数分トントンと背中を叩くと、また穏やかな寝顔を見せてくれたので
そっと寝室を離れた。
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