お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

激しく瞬きを繰り返しながら千花が唖然としていると、


「転ぶのは趣味か」


さっきの熱い視線は錯覚だったのか、修矢は呆れたようにボソッと呟いた。

エンジェル・ウィンストンから出てつまずいたときのことを言っているのだろうが、千花にそんな趣味はもちろんない。


「趣味じゃないです」


毅然と返すと、千花が眉間に寄せた皺を修矢が指先で弾く。


「いっ」


急いで額を押さえると同時に、千花は強い力で身体を起こされた。


「ったく世話が焼けるな」
「そこまで言うほど迷惑はかけていないと思うんですけど」


ちょっと倒れ込んだだけのことだ。それを言うなら修矢のほうではないかと、千花が憤る。


見合いから同居までの期間の短さと言ったらない。それこそギネス認定も可能ではないか。


「ともかく、この部屋で一緒に寝るもよし、別々に寝るもよし。どっちか千花が決めるといい」
「別々で!」


千花が即答すると、鳩が豆鉄砲を食らったような顔をしてから、修矢はほんの一瞬だけ微笑んだ。それは気を抜けば見逃してしまいそうなほど、本当にごくわずかな変化だった。
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