お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「まさか。料理なんて生まれてこのかたしたことはない」
「で、ですよね」
忙しいドクターの身ならなおさらだろう。千花がうんうんと頷いていると。
「ですよねってなんだよ」
修矢が憮然とした顔で千花を見下ろす。
「修矢さんが料理する姿は想像できないので」
「……ずいぶんと言ってくれるじゃないか」
「あっ、ごめんなさい」
慌てて謝るが、修矢に「謝罪の顔になってない」と突っ込まれてしまった。
「俺のこと、怖いとかとっつきにくいとか思わない?」
「……はい? 修矢さんを、ですか?」
千花が聞き返すと、修矢は軽く頷く。
「うーん、愛想がないとは思いますけど、怖いと思ったことはないです」
店に来るときはいつも気難しそうな顔をしていることの多い修矢だったが、かといってそれが怖いわけではなかった。