お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
千花が軽く頬を膨らませると、東子は「違う違う」と慌てて首を横に振った。
「幸せを掴んだ千花に対するやっかみ」
東子は外国人がする仕草のように肩をすくめて笑った。
「それはそうと、大事な衣装なのに彼に見てもらわなくていいの?」
「うーん、時間的になかなか厳しいみたいなの」
修矢自身の衣装は、二回目にふたりでここに来たときに即決してしまった。
修矢は夫となる人。千花も一度は見てもらいたいと思ってはいるが、修矢はどうもあまり衣装に興味がないようだ。
自分のものでさえ、パッと見で決めてしまったのだから。それこそ、ものの十分で。
こうなったら式当日に初めて見てもらうのもいいのではないか。その方が新鮮かもしれない。なんて考えることで千花は自分を慰めていた。
「ま、千花がそれでいいならいいけどね。今まで着た中で、私はそれが一番かな」
東子は、千花が今羽織っている打掛をうっとりとした表情で見た。