お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「なんとか時間がとれたんだ。だいたい決まったか?」
「それが迷っちゃって……」
「迷うことはないだろ。式場や指輪みたいにパパッと決めればいい」
「そんな無茶なことを言わないでください」
一生に一度の結婚式の衣装なのだから悩んで当然だろう。式場や指輪はたまたま。修矢のように即決できるのは、きちんと考えていないからだ。
こうなったら修矢に決めてもらおうと考えた千花の背中が、ツンツンと突かれる。振り返れば椅子に座っていた東子が立ち上がって目を瞬かせ、鯉のように口をパクパクさせていた。幽霊にでも遭遇したような顔だ。
「ちょっと千花、ハイスペックは聞いていたけど、イケメンだなんて言ってなかったじゃない」
東子は千花に小声で異議を申立てながら、修矢に対して「どうもー」と笑顔で愛想を振りまく。その切り替えの素早さには感心しきり。
「聞かれなかったから」
「聞かなくても重要なポイントでしょ」
千花にしてみれば、スペックそのものにもこだわりはない。どちらかといえば、同じくらいの生活レベルの方がよかったくらい。