お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

◇◇◇

今にもこぼれ落ちそうな笑みを浮かべた美幸から「こっちで一緒に紅茶でも飲まない?」と誘われたのは、それから三日後のことだった。

リスのようにかわいらしい顔立ちをした童顔の美幸は、五十代半ばにはとても見えない。緩くパーマをかけたショートカットの髪に白いものはほとんど見られず、張りのある肌には目立つ皺もない。
千花の童顔は、美幸譲りだろう。

木曜日の今日、わたせキッチンは店休日。店から歩いて十分のところにある自宅マンションの自室でのんびりと本を読んでいた千花は、美幸にリビングへ連れ出された。
テーブルには美幸お手製の焼きたてクッキーも並んでいる。

香ばしい匂いにつられながら、千花はふたりの前に腰を下ろした。


「母さんのクッキー、おいしいぞ」


父・幸助が何枚も摘んだクッキーをいっぺんに口に入れて笑う。

幸助は背が高く、若いころは柔道をやっていたこともあり体格もいい。美幸とは正反対で、顔には深く笑い皺があり、髪もシルバーグレー。
五十代後半にしては、少し老けて見える方だろう。


「ほんとおいしそう。いただきます」

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