お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「修矢さんはその……、デートでよくここに来たんですか?」
聞こうか聞くまいか迷った挙句、千花はやはり聞くことにした。修矢が、〝デートの定番〟みたいな言い方をしていたからだ。
楽しい雰囲気を壊すような真似とも思ったが、聞かずにはいられなかった。
「まぁ何度かは」
答えの予想はついたくせに、千花の胸がチクンと痛む。
(……って、なに傷ついてるの! 修矢さんにこれまで彼女がいなかったわけはないだろうし、ここに来るのなんて、カップルなら普通なんだから。特別なことなんかじゃない)
必死になる自分が、なんとも滑稽だ。
「と言っても、いきなり『つまらない』とか言い出されて、あまり楽しかった記憶はないな」
「……つまらないって、その女性がですか?」
修矢が「ああ」と頷く。
「ここがつまらないなんて言ったら、どこがおもしろいんでしょうね」
アトラクションに乗っても楽しいし、食事だってできる。景色だって抜群なこの場所がつまらないとは。
千花は目を瞬かせた。