お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
幸助も美幸も、千花の手痛い失恋を目の当たりにしていた。千花はふたりにも二度と恋はしないと宣言したのだから。
それは千花が二十三歳のときのことだった。
大学を卒業して入社した食品メーカーで、千花は同じ商品開発部の三つ年上の彼氏ができた。明るく社交的、誰にでも分け隔てなく優しい彼は、社内でも男女問わず人気があった。
ふたりが接近したきっかけは残業だった。帰る方向が同じ彼と一緒に帰る日が続き、ある日、別れ際に告白されたのだ。
社会人二年目となり、彼に対してほのかに恋心を抱いていた千花には願ってもいないこと。すぐに交際がスタートした。
ところが半年が経った頃、毎週のように会っていた週末に突然ドタキャンされたり、連絡がつかなかったりすることが増えていく。
千花は純粋に忙しいだけだろうと思っていた。不審な様子も感じられなかったし、『愛している』という言葉で身体も求められていたから。
それがある日、千花は決定的な場面に出くわす。
驚かせようといたずら心が働き、千花は連絡もせずに彼のアパートを突然訪れた。ところが、そこには別の女性の姿が。千花は彼氏の浮気現場に踏み込んでしまったのだ。
それだけでもショックなのに、浮気相手は同じ会社で千花が一番仲良くしている同期の女の子だった。
いつも千花がする彼との話をニコニコして聞いていた彼女が。
『おめでとう。ふたりを応援するね』と言ってくれた彼女が。
あられもない姿で彼とベッドにいるという悪夢。