お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
千花がそう答えると、突然修矢は黙り込んでしまった。
「修矢さん? どうしたんですか?」
顔を覗き込むと、一瞬だけ合った視線を修矢がすぐに逸らす。
どことなく拗ねているように見えるのは、千花の願望が見せる幻覚か。
「……もしかして、ヤキモチやいてくれました?」
そうだったらうれしいが。
期待を込めて千花が見つめていると、修矢は「まさか」とため息交じりに返した。
「……ですよね」
修矢が妬くわけがないと、千花はすぐに思い直す。冷静なのはもちろん、修矢が千花に妬く理由はない。
修矢が病み上がりの朝のキスのとき、ふたりの気持ちが通じ合ったような気がしたのは、千花の勘違いだったのだろう。
どことなく寂しい想いを抱えながらボートに揺られる。もう間もなく、このアトラクションも終わりというときだった。
いきなり修矢から肩を抱き寄せられ、唇が重なる。