お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「結婚するってどういうことですか! 本当なんですか?」
ぐいと顔を近づけて修矢の顔を見つめる。神崎のまん丸の目に気圧されて、修矢は顔を遠ざけた。
いったいどこで聞きつけてきたのか。犬並みの嗅覚の良さに修矢は感心してしまった。
「さっき院長室の前を通りかかったら、そんな話が漏れてきたんですよ」
「盗み聞きするとはいい度胸だ」
「そんなつもりはなかったんですけどね。〝久城〟〝結婚〟なんていうキーワードが聞こえたものですから、ついドアに耳を……」
神崎はばつが悪そうに肩をすくめたが、すぐに気を持ち直して「本当なんですね?」と修矢に詰め寄った。
「大騒ぎする話でもないだろ」
「騒ぎますって! 結婚するって話も聞いてないし」
「神崎には話していないんだから知らなくて当然だ」
修矢は、神崎どころか病院内の人間にもまだ報告していない。