お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

「素敵なお兄さんですね」
「あれが?」


憎まれ口を叩く修矢だが、本気で言っているわけではないのだろう。その目には笑みが滲んでいる。

兄弟のいない千花にとって、たった今のふたりのやり取りは羨ましい光景だった。
あんなふうにやり合っても、心の底から信頼しきっている。友達とは違うなにかが感じられた。

両親には子供の頃から兄弟がほしいとねだったものだが、大人になった今、千花はそのときよりも強烈にほしいと思う。


「修矢さんとはタイプが正反対ですよね」
「俺は無愛想だけど、あっちは愛嬌があるって?」
「そんなことは言っていません」


拗ねたように言う修矢を見て、千花がクスクス笑う。
正反対だからこそ、互いに補い合ってうまくいくのかもしれない。

修矢は不満そうにコーヒーに口を付けた。


「そういえば私になにか話があるって言っていましたけど、なんですか?」

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