お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「兄貴はこの見合いを受けるつもりだった。でも、話が進んでいる最中に海外に飛ばなければならなくなって、いったん見合いは延期ということでうちの親との話はついていたんだ」
一樹が断ったわけでないのなら、どうして修矢が見合いの席に来たのだろうか。
話の先が読めなくて、千花は黙って修矢の言葉を待った。
「その見合いの相手が千花だと知った俺は、兄貴が海外に行って不在の間にその見合いを受けたいと両親に申し出た」
「えっ、どうしてですか?」
例えばこの結婚が、政略的ななにかが絡んだものなら話はわかる。一樹がだめならば弟の修矢を、と。
でも、そんなしがらみはなにひとつない。互いの両親が意気投合したことによる、ごくごく普通の単純な見合いだったのだから。
「千花を兄貴に渡したくなかったから」
「……はい?」
千花が聞き間違えたのか。それとも、修矢が言い間違えたのか。
もしくは千花の聴覚が、修矢の言葉を別のものに変換してしまったのか。
そうでなければ、修矢がそんなことを言うはずがない。