お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「弁当屋で働いている千花に、いつの間にか惹かれていたんだ」
「……私に? 修矢さんが? 嘘でしょ……」
いつもつっけんどんで無愛想。いくら笑いかけようが表情をひとつも変えることのなかった修矢が、自分を好きでいたなど。千花が信じられなくて当然だろう。
「だから、兄貴の見合いを横取りした」
でも、そういうことだったのかと、千花はそこでいろんなことがしっくりくることに気づく。
修矢が早く結婚式を挙げたかったのは、一樹が帰国する前に既成事実をつくるため。
相思相愛を求める千花に、『俺を好きになればいい』と言ったのも、千花が『私のことも好きになってくれるんですか?』と聞いた問いに答えなかったのも、すでに千花のことを好きでいてくれたから。
「それならそうと、どうして正直に打ち明けてくれなかったんですか?」
「見合いする前から好きだったなんて言えるか。しかも兄貴がするはずだった見合いなんだ。ストーカーかなにかと思われて終わりだろ」
「そんなことは……」
「絶対にないと言い切れるか?」
修矢が眉間にたっぷりと皺を刻み込み、まるで脅すように聞き返す。