お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました

◇◇◇

千花がわたせキッチンのドアを勢いよく開ける。


「ただいまー」


大きな声で中へ入ると、厨房から幸助と美幸が揃って顔を覗かせた。


「ちょっと千花! ただいまって帰ってくる場所が違うでしょ!」
「修矢くんはどうしたんだ」


目が覚めた時間自体が遅かったため、身支度を整えてホテルを出たのはチェックアウト時間の十一時ぎりぎり。そこからタクシーで乗り付けたわたせキッチンは、ちょうどピーク時間を迎えようというときだった。

店内には常連の男性客もいて、「千花ちゃん、結婚したんだって? うちで息子が泣いていたよ」と冗談を交えながら「おめでとう」と祝福してくれた。


「修矢さん、病院から呼び出しがあったの」
「そうか。まぁ医者というのは忙しいものだろうからね」


仕方ないというニュアンスを幸助が含める。それは千花も承知のうえだ。

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