お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
◇◇◇
「久城さん、お休みのところ呼び出してすみません!」
医局に到着するなり、振り返った神崎が頭を下げる。
「いや、緊急事態だ。かまうな」
軽く右手をあげ、修矢は荷物を置くと素早く手術室へと向かう。そのあとを神崎が追った。
久城総合病院の産科にかかっていた妊婦は、胎児に左心低成形症候群という先天性の病気が見つかり、出産と同時に手術することが決まっていた。
左心低成形症候群は、左側の心臓が極端に小さく、全身へ血液をうまく送り出すことができない。
当初は二週間後の分娩予定だった。ところが今朝、胎児の容態が不安定となったため、急きょ産科の医師によるカイザー――帝王切開での分娩となった。
その新生児は、つい先ほど小児外科にある第三手術室に運び込まれたところ。修矢が執刀するのだ。
スクラブに着替え、全身を消毒した修矢が目を閉じる。ゆっくりとした呼吸を意識し、肺を伝って全身に酸素を送り込んでいく。