お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
術前に修矢が必ず行う儀式のようなものだった。
手術室内に心電図を始めとした機械音が響き、緊迫感に包まれる。
ピンと張りつめた空気が、修矢の感覚を一気に研ぎ澄ませる。全身から立ち上るオーラには、鬼気迫るものがあった。
修矢の前には手術台に横たわる小さな身体。すでに麻酔がかけられ、人工呼吸器が装着されている。
「脱血管」
開胸を施したあと、修矢の合図により、心臓内の血液がどんどん抜かれていく。
「ポンプオン」
続いて人工心肺装置が作動。
心臓は止められて三時間。それ以上は筋力が弱っていき、回復が難しくなる。一秒たりとも無駄にはできない。
「バイタルは?」
「安定してます」
直径三センチほどの小さな心臓の血管と直径五ミリの人口血管を縫合していく。
コンマ一ミリのミスが小さな心臓には命取り。神経を極限まで鋭敏にし、修矢は一つひとつの処置を確実に、迅速に行った。