お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「イテッ! もぉ、なにすんですか。大事な脳細胞が今のでいくつ失われたと思ってますか? もう毎度毎度たまんないですよ」
修矢を恨めし気に見ながら、神崎は情けない表情を浮かべた。
(ほんとにコイツは……)
修矢は呆れるばかり。
「そんなに優秀な脳細胞があるのだとしたら、とっくに優秀な外科医になってるんじゃないか?」
そもそも、そんなに強く殴った覚えは修矢にない。神崎が大げさなだけなのだ。
「うわー、きたよ、久城さんのストレートパンチ。かわいい後輩に厳しすぎません?」
「誰がかわいい後輩だ」
「俺ですよ、俺。もう久城さん、勘弁してくださいよ」
親鳥を追う雛鳥のようにピーチクパーチク騒ぐ神崎を引き連れ、修矢は医局へ辿り着いた。
白衣をロッカーにしまい、持ってきたブリーフケースを手に取る。
「それじゃ、今日はこれで帰る。術後のケアはいつものように神崎、主治医のお前に任せたぞ」