お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
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新婚生活初日。今夜は腕をふるって料理を作ろう。そう意気込んだ千花は、店からの帰り道にスーパーで買い込んできた食材を広いシンクに広げていた。
とびきりおいしいと店員におすすめされたボトルワインも手に入れ、小さなホールケーキも買ってある。
いつもは〝これぞ家庭料理〟という素朴なものを作ることの多い千花だが、今夜だけはちょっとおしゃれに決めようと企んでいた。
準備を始めて二時間が経過した頃だった。千花がオーブンでローストビーフの出来栄えを慎重に確認していると、不意に後ろから抱きすくめられた。
四重のセキュリティ。この部屋に修矢以外の人間が入り込めるわけがない。そう頭でわかっていても、思わず「キャッ」と悲鳴を上げてしまう。千花の心臓が大きく飛び跳ねた。
「悲鳴を上げることはないだろ」
修矢はいつもの口調でそう言うが、ついこの前まで、帰ってきてすぐにこんなふうに修矢に抱きしめられたことはない。突然態度を変えられれば、千花は戸惑うしかない。
「いきなりでびっくりしちゃって」