お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
婚姻届の行方
カラフルな風船が描かれた壁を横目に、呼び出しの館内放送が流れる中、千花は大きな弁当箱の入った大きなバッグを抱えて歩いていた。
修矢と式を挙げてから二ヶ月が経過。結婚を機に甘い一面を見せるようになった修矢とは、とてもいい関係を築けている。見合いから始まったふたりは、まさに幸せの絶頂と言える時期にいた。
千花は弁当屋での仕事が休みの日は、こうして病院にいる修矢のもとへ弁当を届けに来ている。初めて修矢に弁当を届けたあの中庭で、ふたり揃って食べるのが恒例行事となっていた。
「千花さんじゃないですか?」
そう声を掛けてきたのは、修矢と同じ小児外科に勤める医師、神崎だった。
修矢と結婚する以前から、ちょくちょくわたせキッチンにも足を運んでくれ、いつだったか『具合が悪いときにはぜひ』と名刺をもらったこともある。
「こんにちは」
「今日も千花さん特製のお弁当ですか?」
「はい、そうなんです」
そう言いながら千花はバッグを持ち上げて見せる。