お見合い婚 俺様外科医に嫁ぐことになりました
「くそうっ! いいよなぁ、久城さんは。ほんとずるいんだからなぁ」
なにがずるいのか千花にはわからないが、神崎がいつもこうして気さくに話しかけてくれるおかげで、ここへも気楽に来られる。
「よかったら神崎さんもご一緒にどうですか? たくさん作ってきているので」
「うわっ、本当ですか? うれしいなぁ!」
神崎が飛び上がらんばかりに喜んでいると。
「神崎先生、私の目を盗んでこんなところで油を売るとはいい度胸ですね」
いくらか野太い声が聞こえ、神崎と千花は揃ってそちらへ顔を向ける。
するとそこには、小児外科の看護師長の美代が腕組みをして仁王立ちしていた。
五十代半ばの美代はふくよかな体型も手伝って、とても貫禄がある。
きっちりとしたおだんごを後頭部に作っているせいで目が吊り上がっているのも、そこに拍車をかけているのだろう。
「うわっ、来たよ」
美代は、神崎がボソッと漏らしたひと言も聞き逃さない。